2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

母について ヴィルジニーのプライド 3

実家がどんどん荒れていくことに気づいていないわけではなかった。何とかしたいと思っていた。実家に様子を見に行こうとすれば、「忙しいんでしょ、来なくていいわよ」と言われ、それでもと押しかければ、散らかり放題の家を見て、「なんとかしましょうよ」…

母について ヴィルジニーのプライド 2

父が死んだあと、母は家事をしなくなった。もともと家事が好きなひとではなかった。いや、別に家事をしないならしなくてもいい。家政婦を頼むなり、もっと小さな部屋に引っ越すなり、ほかに方法はあったはずだ。だが、母は遅くまで起きて市長への陳情書を作…

母について ヴィルジニーのプライド 1

母が死んで何がつらいって、ちっとも悲しくないことがつらい。あんなに大事に育ててもらったのに。父が死んだときはあんなに悲しかったのに。空っぽになった実家にいくとわいてくる感情は悲しみではない。怒りや自責の念や憤懣やるかたない気持ちはあっても…