わたくしごと

 いくつもの名前とひとつの体

SNSを始めるとき、周囲から「実名を使うのはあぶない」と言われた。かといって、自分の訳書の紹介もしたいし、友人たちに私のことだと気づいてもらわないと不便だ。というわけで、苦し紛れにかつて句会で使っていた俳号もどきの永田永をアカウント名としてツ…

変わるけど変わらない ローランサンのグレー

グレーが好きになったのはいつからだろう。ロアシアン・ブルーやワイマラナーの毛色は美しい。パリに住んでいた時も灰色の冬の空は決して嫌いではなかった。黒か白か、零か百かではないニュアンスはやさしさがあっていい。 10代の頃からローランサンが好き…

物語を読む わたしの伯父さんと『物語のカギ』 

今年の元日のこと。「賀状にメールアドレスがあったので」と。御年90歳の伯父上から長文のメールが来た。拙訳書『京都に咲く一輪の薔薇』(*)を読んだというのだが、どうも「はじめて京都に来たフランス人の主人公」を「京都で生まれ育ち、久しぶりに帰郷し…

遠くて近い戦場のこと

戦争は嫌です。戦争をしてはいけません。でも、戦争は始まってしまいました。この一週間で考えたことを書いておきます。 極論を言うなら、いま、一番「早く」戦争を終わらせる方法はウクライナが抗戦せず、白旗を挙げることです(もちろん「最善」の方法では…

白黒白日記 (3) 白髪三千丈

9月某日 白髪染めやめて半年。バスに乗ったら席を譲られた。だいじょうぶです、と座らなかったのだが、家に帰って夫に話したら、「ありがたく座っておかないと、本当に座りたいときに誰からも譲ってもらえなくなるよ」と言われる。そうなのか。席を譲る条件…

白黒白日記 2 ともしらが

白黒白日記 (2)ともしらが 7月某日 白髪染めをやめて四か月、大学の同期とZoom飲み会。やっぱりワタシだけ老けて見える。えーん。じぶんのなかの「見栄」に気づかされる。その一方、染まるシャンプーもあるよ、などというアドバイスがありがたいような、う…

白黒白日記 1 ノームコアのたてがみ

白黒白日記 (1)ノームコアのたてがみ 2020年1月某日 母の一周忌。遺影の母はプラチナヘア。父が亡くなるまでは髪染めていたから、母は父のために70代まで「若くきれい」でいようとしていたのかしら。私は誰のために染めているのかしら。あと20年染めつづけ…